Technology

ラングは情報処理の技術を応用し、埋蔵文化財事業に関わる情報をデータ化する「ラングシステム」(特許技術)を構築しています。当社独自技術の具体的な解説です。

システムのSEEDS

ラン地形斜度図グシステムは地形情報処理技術が基礎となっています。自然地理学では数値標高地図に画像処理を施し、断層やカルデラなどの地形情報を可視化する技術が発達しています。経験的な判読をもとにしたこれまでの手法から一歩進んだことにより、新たな発見をもたらしています。ラングシステムはこういった地形起伏(マクロ)の抽出手法を応用し、対象を遺物表面の起伏(ミクロ)に置き換えた場合にどのような結果が得られるかという発想から研究がスタートしました。

システムフロー

ラングシステムは、システムフロー以下のプロセスから成り立っています。
(1)3次元計測:対象物を3次元計測し、"CORE DATA" を作成する段階
(2)データ処理:"CORE DATA" に画像処理を施してベーシックな情報を取得する段階
(3)PEAKIT作成:(2)で得られた画像を統合し考古学的に有意な画像として再構成する段階
(4)図化:(3)で得られた情報を基に、対象物を目視判読しながら実測図を作成する段階
 最大の特長は3次元計測でCORE DATA を作成することによって、そこから多種多様なデータの出力バリエーションを得られる点にあります。

"COREDATA"の作成

LEICA HDS3000ラングシステムは"CORE DATA" の取得からスタートします。遺物サイズの計測は対象物によって接触型、非接触型レーザーなどを用います。遺構や遺跡サイズの計測は中距離型レーザーなどを選択してデータ取得をおこないます。地形を対象とする場合は国土地理院が作成する数値地図を用います。
 ラングシステムで用いる"CORE DATA" は形状特徴線を鮮明に抽出することを前提としたものであるため、高い精度が要求されます。そこで新たにデータを取得する場合は、主として信頼性の高いレーザー方式を選択しています。

"CORE DATA"から抽出される情報

レリーフ画像

土器レリーフ画像遺構レリーフ画像レリーフ画像とは、遺物の"CORE DATA"上の各測点の接平面の法線方向と、指定された光の入射方向とのなす角の大きさを白黒濃淡で表示した画像です。
 図は、土器片及び遺構のレリーフ画像の例です。光の入射方向は、対象の形状特徴が最もよく表現できるように設定できることから、摩滅の顕著な遺物であっても鮮明な画像を作成することができます。また、レリーフ画像は、写真とは異なり、遺物表面の色には影響を受けないので、純粋に形状の観察が可能となります。特に無文土器は指頭圧痕や輪積の方向などを鮮明に抽出することが出来ます。

寸法図

石器の寸法模式図 寸法図は"CORE DATA"から自動的に作成した寸法の模式図です。以下の2種類の計測値を算出します。
(a) 石器実測図を長方形で囲んだ一辺の寸法(図中の実線で示した計測部位)
(b) 長さ、幅、厚さの各方向において、最も大きな値をとる位置での寸法(図中の点線で示した計測部位)
 (b)の計測法の場合、「どの位置で最大の値をとるのか」という情報が不可欠になります。弊社では自動処理で最大値をとる部位を探索し、図のような寸法図を作成します。

断面図

断面図断面図とは、遺物の"CORE DATA"をもとに、断面輪郭線を展開した図です。断面輪郭線は任意の位置で取得することもできますし、また等間隔で多数の断面輪郭線を取得することも可能です。これらは形態を表す基礎資料として、または使用痕分析に付随する刃部角の情報を提示する上で有効です。

特徴線画像

石器特徴線画像遺構特徴線画像
図は石器と遺構の特徴線画像の例です。特徴線画像とは、遺物の"CORE DATA"に画像処理を適用して、表面の凹凸構造の特徴線を抽出した画像です。
 形状データから特徴線を抽出する手法は、当社独自に開発したものです。特徴線画像は石器の実測図作成時の素図として利用されるとともに、土器文様の同定にも有効です。この特徴線画像が当社で提供中の「PEAKIT」の基本技術となっています。

3次元オブジェクト

3Dオブジェクト3次元オブジェクトとは、遺物の"CORE DATA"を立体表示したもので、任意の方向から見た表示が可能です。図は、石器の"CORE DATA"をインターネットのブラウザで表示たものです。この技術は、博物館展示やインターネットによる公開などに有効です。

PEAKITの作成

ラングシステムは、"CORE DATA"から抽出された様々な情報を対象物の性質に応じて選択的に重合表示させます。これは物体として把握された形状特徴をもとに考古学的に必要な形状情報を再構成していくプロセスになります。図は石器、土器片、遺構のPEAKITです。発掘調査における3次元計測技術の導入は今や珍しいものでは無くなりつつありますが、3次元データから考古学的な特徴を鮮明にするための技術はラングシステム独自のものです。
石器PEAKIT土器片PEAKIT遺構PEAKIT

KEYWORDS

「高精度」であること

ラングシステムでは遺物1点につき数万〜数百万点からなる高密度で高精度な3次元測点座標を記録しアーカイブします。私たちは、報告書作成に限らず将来的に所望される分析、復元、公開、あるいは不慮の事故による消失など、多種多様なニーズに応えられるデータを作成することが記録保存の本来の目的であると考えています。

「シンプル」であること

ラングシステムは機械化できる部分と不可能な部分を明確にわけています。たとえば実測図作成に関しては機械で作成可能な情報は全て「PEAKIT」に凝縮されていますので、そこからの作業は非常にシンプルになります。鮮明なPEAKIT画像をキャンバスに、遺物を観察しながら考古学的な情報を表現していくことだけに集中することができます。

「再現性」があること

ラングは考古学が実証学問であることにこだわり、観察図の作成といえどもその根底には「再現性」のある根拠が必要だと考えています。「100人やっても全て同じ結果」あるいは「1人が100回やっても全て同じ結果」が得られる3次元"CORE DATA"を作成し、それを基礎として判読や診断を行なうというプロセスを重視し、実践しています。

「多角的」に分析できること

ラングシステムは3次元"CORE DATA"を多角的に解析し、定量的なデータを抽出するためのシステムです。解析手法はこの先も進歩し続けますので、"CORE DATA"が保存されていればそのデータに対して常に最新の処理を適用することが出来ます。こうすることでデータを「生きた記録」として成長させることが可能になると考えています。

「恒久的」に残すこと

私たちは、遺跡や遺物の記録が、一回の書物作成のためではなく 活用され続けるためのデータであることを意識しています。それは例えば100年後の考古学者が私たちの作成した記録から新たな発見が出来ることです。そのために主観、歪曲、隠蔽、錯誤を極力排した記録を作成し、それを劣化しない形で残すことが大切だと考えています。

「コスト」を抑えること

いかに素晴らしい仕組みであろうとも、実践の場で活用できないものであれば意味がありません。ラングシステムは高い精度、品質、付加価値を供給するとともに、徹底した自動化、ルーチン化が図られ、高いコストパフォーマンスを生み出します。提供するデータのバリエーションも多様で、予算や作業体制に合わせたサービスを提供します。